香港学習塾 epis Education Centre

わかば深圳教室 教室長ブログ

教室長末木千尋

2011年12月に香港へ赴任。旧九龍教室、わかば深圳教室とで合計6年間勤務をし、2017年から再び深圳へ。きめ細やかなサポートには定評があり、時間が経つのも忘れついつい話し込んでしまうことも。本気で立ち向かう生徒の守護神として頼れるアネゴ的存在であるスエキチ先生は、衣食住どれをとっても刺激の絶えないここ深圳での生活がお気に入り。暑さには弱いが辛さには強い。好物は山椒のたっぷり入った激辛料理全般だとか。

グルガオン教室名古屋合宿で得られたもの

一夜かぎりの花火でリラックス。

かけがえのない時間となった7日間

名古屋市にて6月7日から6月14日の7日間、インドのグルガオン教室の中3生を対象に合宿が開催され、グルガオンの水元教室長とともに、深セン教室からは渡辺が参加となりました。

合宿初日に生徒一人一人に抱負を述べてもらったところ、生徒たちにとっては長時間学習する不安よりも、生活面に対する不安の方が大きかったようで、自分で起床したり、自分で衣服を洗濯したりすることの方が心配だったようです。

在外邦人子女は、限定された社会・生活環境で生活しているため、自立した生活力があるとは言い難く、どうしても過保護になりがちです。普段は親御さんに起こされている生徒たちも、合宿中は集合時間に寝坊して遅刻したり、授業中に居眠りしてしまったりしながら、睡眠時間がどの程度必要なのかを改めて体感して学んでいったようです。水元先生が頭ごなしに説教するのではなく、じっくり見守ってくれているからこそ、生徒たちは失敗を許され、自分自身で成長する機会を得られたのだと思います。

本当の学びとは

いかに効率よく情報を吸収し、スキルを習得するかというスピード社会において、生徒・子供達に対する知識は供給過多になりがちで、子供の意志とは関係なく、矢継ぎ早に課題・タスクが与えられます。子供達は何も考えなくても、大人の与える課題を効率よくこなせば成績が上がり、偏差値の高い大学に入ることができます。

逆に「どうして勉強するの?」と立ち止まってみたり、「どうしてそうなるの?」と数学で悩んでみたりすると非効率で時間がかかり成績が上がらず、「いいから覚えればいいんだよ」と興味や疑問とは無関係に機械的に覚えてしまった生徒の方が成績を上げるケースもあります。

そんなスピード社会において大人に必要なことは「待つ」忍耐力で、子供に考えさせる余裕を持ち、選択をさせ、少し遠回りをしながらも、自分自身で歩ませてこそ「非認知能力(いわゆるやる気、自信など)」を育むことができます。

非認知能力論者のポジショントークにおいては、「認知能力(いわゆる学力、語学力など)」の習得が否定(日本は受験勉強ばっかりやりすぎでしょと)されることもしばしばですが、何かを極める、手に職をつける、専門家として生きていくためには専門的な知識が必要で、それはまさに認知能力が必要になってくるわけです。

認知能力を高めるためには、一定の訓練が必要で、それが勉強であったり、筋トレであったりするのですが、非認知能力(やる気)を高めずに認知能力(学力)を高めようとするから、そこに歪みが生まれるだけなので、認知能力の向上を否定するのは筋違いと言うほかありません。もちろんやる気を無視した詰め込み教育には賛同できません。

合宿で得られたもの

グルガオン教室の水元教室長の生徒たちへの指導は、自分で行動させ、自分で気付かせ、自ら改善させていく、非認知能力の成長を重視した指導で、頭ごなしに叱るようなことはありません。生活を矯正するのではなく、生徒たちに自分の行動を省みる機会を与えつつ成長を見守ってくれました。

生活面の指導は水元先生がしっかりみてくれていたので、私は非認知能力と認知能力を高めることに集中できました。具体的に言えば「数学を楽しむ」ことと「数学のレベルアップ」でした。

1日に3〜5時間もの数学の授業を贅沢に設定していたので、生徒が「どんだけ出てくんの!」と毎日お腹いっぱいになるまで数学の楽しさを堪能してもらいました。数学を学ぶことは認知能力の習得以外の何物でもありませんが、「おもしろい!」「すごい!」と積極的な姿勢で生徒たちが学習してくれたので、合宿スタート当初は「どんだけ数学の勉強するんだよ・・・」と思っていたであろう生徒たちも「もっと知りたい!」「もっと解けるようになりたい!」という前のめりな姿勢になっていました。それはもう「受験」のためにやらなければならない義務的な勉強ではなく、頭を使った高度なパズルゲームをやっているような状態です。

今回合宿に参加した生徒たちは、各教科の学力を上げたことは言うまでもありませんが、それ以外にも大きな学びがありました。それは、合宿生活を通じて学んだ自立心、合宿だからこそ贅沢に設定できた数学の授業から得られた学ぶ楽しみです。
きっとこの7日間に得られた経験がみんなの自信になってくれると思います。
今回の合宿での生徒たちの成長を目の当たりにできたことと、楽しく数学の授業をできたことで、一番楽しませてもらったのは私自信かもしれません。

グルガオンのみんなありがとう!


makebolockのHaloCodeのプログラミングにも挑戦しました。


2018年総括「やはり深センらしい1年」

中学生たちとドローンで撮影。

2017年の反省から「原点回帰」を念頭においてスタートした2018年。
チャレンジよりも地固めと思っていましたが、勢い溢れる深センという街はそんなことを許してくれるはずもなく、チャレンジに満ちた1年となりました。

2018年は、わかば深セン教室の新たな取り組みとして、「英語教育の進化」、「STEM教育」の2つの大きなチャレンジをしました。

「英語教育の進化」

「英語教育の進化」は、episの英語の講座である「Next English」の学習システム「e-time」に「Next Grammar」を加え、学習のシステムを強化させたことです。

この強化により、「小学生のうちに英検2級」は夢ではなく、当然目指すべき目標点になったと言えます。

深センの子供たちは、日本に帰るときに世界中から帰ってくる帰国生と同じ帰国生として扱われ、入試においてはレベルの高い英語の試験を受ける必要があります。

深センで当たり前に英語の学習をしたのでは、その英語の試験には全く歯が立たないので、ここ数年は一番力を注ぎ込んできました。

数年かけて研究してきたそのプログラムが今年ついに進化を遂げ、子供たちがメキメキと英語の力をつけてくれています。

「同じ帰国子女だけど英語が苦手」などというコンプレックスはもう持たなくても大丈夫!

STEM教育のスタート

STEM教育(Wikipedia参照)」をスタートできたことは、わかば深セン教室が深センにある責任を果たすという意味でも非常にうれしいことです。

深センという街がイノベーションを産み出す先進的な都市として世界的な注目を集める中、深セン市で行われる教育も独自の進化を遂げ、モノづくりとプログラミングを融合させた新しい形のSTEM教育の体系を作りあげています。

この深セン特有のSTEM教育は、AI活用前提の新時代に生きる子供たちが大人になったときに役立つ能力、リテラシーを身につけるには非常によい学びだと思います。

その学びが実践されている深センに住む日本の子供たちが地理的恩恵を受けずに日本に帰っていくことは本当に大きな機会損失なので、STEM教育をスタートさせることは私にとっては悲願でもありました。

そのSTEM教育をスタートさせることができたのも、日本からの多くの協力者があったからこそです。

深センに住む日本の子供たちに深セン特有の教育を届けたいという、私と同じ思いを持つ、深セン在住、日本在住の有志たちが、知識面、技術面、物資面そして精神面でもサポートしてくれたことが大きな力となりました。

自分自身で物事を解決したり、対価を払って物事を解決したりすることでなく、「深セン」をキーワードに生まれたコミュニティーのネットワークによって物事が前進させるような、インターネット社会が産み出す、新しい時代の人の関わり方、仕事の取り組み方を知る機会にもなりました。

来年も「原点回帰」

結果的に「原点回帰」を意識しながらの「猛ダッシュ」の一年になった2018年。「原点回帰」を常に意識していないと深センという魔物の濁流に飲み込まれかねないので、来年も「原点回帰」でがんばります!

ご協力くださったみなさま1年間誠にありがとうございました。
来年もまたよろしくお願いいたします!


マインクラフトで学ぶプログラミング

ブロックによるビジュアルプログラミングを使用

マイクロソフトのオフィスやマインクラフトエデュケーションの開発チームでプログラムマネージャだった鵜飼佑さんに、マインクラフト(Minecraft Education Edition)を使ったワークショップを開催していただきました。

マインクラフトで遊んだことがあっても、プログラミングはしたことがないという生徒がほとんどである中とてもとても楽しいワークショップとなりました。

2020年のプログラミング教育必修化において、プログラミングの学習の目的は、プログラマーが日本に不足していることや、プログラミング的思考力をつけることとも言われています。

正直そこには夢もありませんし、何を目指しているのかが捉えにくい印象が拭えないのですが、実際に文科省でプログラミング教育を推進されている鵜飼さんにお話しをうかがうと、もやもやとしていたイメージがとてもクリアになります。


トリが100羽降ってくる

まず小学校におけるプログラミング教育は、「プログラミングを楽しく体験する」ことが第一で、「またやってみたい、もっとやってみたい」という子供が増えることが一番だということです。それから、「プログミングによって解決できることがある」ことを知ることです。

人間が作業をしたら大変で、ミスをしてしまうこともコンピュータなら、ミスもなく楽にこなしてくれます。むしろそこがコンピュータの得意な分野であるわけです。

今回は、マインクラフトのプログラミング機能を使って、「階段を作る」「螺旋階段を作る」「空から100羽のニワトリを降らせる」などという手作業では非常に手間のかかることを1つの命令だけでやる方法を学びました。

この学びにおいて重要なことは、その時に入力したコマンドを覚えることではなく、プログラミングによって「複雑な作業を効率化できる」ということ、そして「プログラミングができたらもっともっと楽しくなる」ということです。

今回のたった1回のワークショップだけでも、「またやってみたい」、「もっとやってみたい」という声を多く聞くことができました。

2020年のプログラミング教育必修化は不安の声ばかりしか聞こえてきませんが、今回のワークショップを通してきっと楽しいものになるだろうと感じました。


ドローンスクールワークショップ

コワーキングスペースのイベント会場

深圳市龍崗区にあるドローンスクールにて、小・中学生向けのドローンのワークショップを開催しました。
ワークショップの構成は「飛行機・ドローンの歴史」、「ドローンの組み立て」、「DJIドローンのVRゴーグル体験」となりました。


ワークショップはほとんどが中国語で、一部英語という内容なので、中国語が得意な生徒に通訳として参加してもらいましたが、「問題は自力で解決する」というのが今回のイベントの主旨の1つでもあったので、困ったら中国語か英語でスタッフに自分で話しかけたり、身振り手振りで意思疎通したりしてもらいました。

ドローンの組み立ては、極めて中国的なノリで「とりあえず組み立ててみよう!」とスタートしました。木製のパーツを1つ1つ組み立てる作業は中学生でも大変な作業で、約1時間半を要する作業となりました。

ドローン本体の枠組みができあがったところで、ドローンを制御するボードやモーター、プロペラを取り付けます。


取り付けが完了した生徒からリモコンとペアリングして飛ばし始めるのですが、実はここからが中国式ドローンワークショップの開幕だったということは私もその時にはじめて理解しました。

いざ飛ばし始めてみると、さまざまな問題が起こります。今回組み立てたドローンは、ドローンの代表格である、クワッドコプター(quadcopter)でプロペラを4枚搭載したものです。
クワッドコプターの場合、全てのモーターの回転方向が同じ回転方向にしても飛ぶことができず、斜めのペア同士で回転をそろえ、隣同士は反対方向に回転させる必要があります。

また、モーターに取り付けるプロペラも2種類あって、それらを正しく取り付けないと、モーターは回転するものの全く飛ばなかったり、ドローン本体が回転しながら飛んでしまったりします。

これらの問題は座学で前もって知識を与え、説明書をしっかり見ながら組み立てさせれば何も問題が起こらないわけですが、そこは意図してか、意図せずにか「組み立てたら飛ばしてみよう!」、「飛ばなかったら考えよう!」というスタンスなので、問題がそこら中で起こります。

そして「なんで飛ばないの!?」ということになり、ここから学びの時間スタートという荒行です。

荒っぽい学びではありますが、座学で得る知識とは全くことなるインパクトがあります。説明書通りに正しく組み立てた場合は、モーターの方向など何も気づかずに飛ばせてしまい、全く学びがない可能性もあります。


学びのプログラムを精緻に作り込むことももちろん重要ですが、お膳立てが多いことで学びの機会を失ったり、学びのモチベーションを下げてしまったりする可能性もあります。

今回は中国の荒波のようなワークショップの中で自分の手で最初から最後までドローンを組み立て、飛ばすところまでの経験は、ドローンのワークショップを超えて中国そのものを経験しているという点でもおもしろい学びの機会になりました。

今回組み立てドローンは、手で組み立てたドローンにも関わらず非常に安定していましたし、プログラミングもできるものです。次はまたプログラミングもからめたワークショップにも挑戦したいと思います。


深セン発!M5STACKワークショップ

ルーク先生のM5STACKワークショップ

M5STACKスタッフの多大なる協力の下、深センに住む日本人の小学生・中学生向けにM5STACKのワークショップを開催することができました。深セン発のデバイスであり、深センのエコシステムの象徴と言っても過言ではないM5STACKをここ深センで深センに住む子供達と学ぶ機会を得られたことは、本当にありがたいことです。

参加生徒13名に対して、なんと開発者のJimmyさんを含めたM5のスタッフが6人も来ていただけるという、超手厚いサポートでのワークショップとなりました。

講師はM5STACKの開発スタッフであり、STEMの先生でもあるイギリス出身のルークさん、そして日本語でのフォローに塩入さんも来てくれました 。

このワークショップで感じたのは、プログラミングがPCの中で完結することと、プログラミングでPC外部のデバイスを制御することは、全く違う体験なのではないかということです。


Scratchでネコのキャラクターを動かすのと、M5STACKのディスプレイにアニメーションを表示させる作業自体に大きな違いはありませんが、PCだけで完結するプログラミングに対して、PC外部のデバイスを制御できることは、物理的な空間への拡張性が全くちがいます。今後大きく発展するであろうIoTを体験し、学ぶという点でM5STACKはおもしろい製品だと感じました。

自分自身が技術的に何ができるのかを知ることは非常に重要で、脳波を感じ取るセンサーがあることを知らない人は、それを使った製品を作り出すことができるはずがありません。新しいサービスやプロダクトを生み出すためには、様々なテクノロジーに触れて想像力の幅を広げておく必要があります。

M5STACKは各種センサーを簡単に接続することができるので、「人を感知したらLEDをつける」という日常的に使われている機能から、子供が家に帰ってきて「ただいまー」と言った音声を拾って 親のスマートフォンに音声を届けるといったことも簡単にできます。


blocklyベースのUI Flowでプログラミング

M5STACKのようなデバイスや外部に接続するセンサーを安価に入手することができるようになり、小学生や中学生でも自分の思いついたアイディアを形にできるようになったことで、次の新しいサービスやプロダクトを生み出すステージにいつでも立つことができます。

また、今回のワークショップのように、プログラミング学習を目的とせず、手段として学びつつ、新しいサービス、プロダクトを生み出す想像力を養う手法は、日本のプログラミング教育での1つの方向性になるのではないかと思います。

「プログラミング」に重心をおくのか、「プログラミング×ハードウェア」でIoTを学ぶのか、同様に「プログラミング×ハードウェア」でプログラミングとハードウェアを手段として想像力を養うのか、一概にプログラミング教育と行っても方向性も手法も全くことなってきます。


M5STACKと各種センサー

日本のプログラミング教育は迷走しているようにも見えますが、子供達の何を育てたいのかさえ明確にできれば、後は予算と相談しながら教材やカリムキュラをそれに合わせて選ぶだけです。

ワークショップの時間中「楽しい!」を連呼していた小学生、先生が提示してくれたコードを無視して自分の思いついたコードに勝手に変えていく中学生(試したくてしょうがない)を見ていると、たった1回のワークショップでも子供たちにとっては刺激的な体験になったのではないかと思います。

また次も楽しいワークショップを開催できたらと思います。M5STACKのみなさまありがとうございました!