香港学習塾 epis Education Centre

わかば深圳教室 教室長ブログ

教室長末木千尋

2011年12月に香港へ赴任。旧九龍教室、わかば深圳教室とで合計6年間勤務をし、2017年から再び深圳へ。きめ細やかなサポートには定評があり、時間が経つのも忘れついつい話し込んでしまうことも。本気で立ち向かう生徒の守護神として頼れるアネゴ的存在であるスエキチ先生は、衣食住どれをとっても刺激の絶えないここ深圳での生活がお気に入り。暑さには弱いが辛さには強い。好物は山椒のたっぷり入った激辛料理全般だとか。

深セン市の教育事情(幼稚園)

普恵性幼稚園に関する記事

深セン市南山区では3年以内で17箇所(6300人分)の幼稚園を新設するとのこと。深センの平均所得が7000元(約12万円)程度なのに対し、幼稚園の学費が安くても2000元/月(3万円)程度で、3000元、4000元も(4万、5万円)当たり前というのが現状です。
しかし、南山区政府の支援の元、「普恵性幼稚園」というタイプの1000元未満(1万円程度)で通える幼稚園をすでに155箇所も設定しています。
テクノロジー、イノベーションとが注目を集める深センですが、若い親たちが深センに住みたい、南山区に住みたいと思えるような教育環境作りも着々と進めています。
イノベーション人材を発掘、育成するためにも官民とも教育に非常に力を入れていることがわかります。深センに住む我々日本人もこの環境を有効活用していければと思います。


パスカルアカデミーにてプログラミング教育ロボットPETSに挑戦!

日本のPETSと深センのmbot


このパーツでプログラミングを行う

わかば深圳の「パスカルアカデミー」では、プログラミング学習用ロボットのPETSに挑戦しました。PETSは今週末のMakerfaire Shenzhenにも出品されるプログラミング学習用ロボットで、最近では日本各地でワークショップも開催されています。対象は幼稚園年長から小学校低学年ですが、扱い方次第では大人でも楽しめるロボットです。

パスカルアカデミーは、「数理能力」「言語能力」そして「仮説思考」を伸ばすためのプログラムとして開講しています。科学実験においても事象を観察するだけではなく、思考し、発表する、レポートにまとめる点で、総合的な力をつけていく狙いがあります。

今回はPETSを使って、空間認識力、思考力を高めると同時に、あれこれ周囲の仲間と相談しながら作業を進めるチームワーキング力、コミュニケーション能力を高めるために挑戦してみました。


動きがかわらしいPETS

最近日本でも注目を集めつつあるSTEM教育でも、科学、技術、工学、数学という表面的な技能ではなく、実際のものづくりの現場で必要とされる、チームワーキング力、コミュニケーション能力を重要視しています。

今後も、このパスカルアカデミーや、深セン日本人補習校、若葉幼稚園でのワークショップを計画していますが、ここでの目的は単なる「プログラミング学習」に終わらない、「プログラミング×言語教育」も念頭においたイマージョン教育を目指していきたいと思います。


セミナー開催のご報告「イノベーション都市としての深圳」

SegMakerでのセミナーの様子

10月26日(木)深圳市福田区華強北にあるメイカースペース・コワーギンクスペースのSegMakerにて「イノベーション都市としての深圳」というテーマで東京大学の伊藤亜星先生にご講演いただきました。

今回、伊藤先生には、このセミナーを「お父さん、お母さん」向けに開催していただきました。それは、深圳に住む多くの日本人が深圳に住んでいるにもかかわらず、目の前で何が起こっているのかを理解することができていないことに、私自身が非常に強く危機感を抱いていたからです。


華強北の電気街

今深圳は激動の時代を迎えています。かつて「コピー商品のメッカ」という惨めな呼称を持っていた深圳ですが、今や、「ハードウェアのシリコンバレー」「イノベーションの都」と天地が一変するようにその評価が激変しています。

深圳の技術者たちは、コピー商品を安く大量に生産し続ける過程で、完璧なコピー商品、さらには本物よりも高機能な商品まで作り出せるようになりました。技術者たちは、安価な労働力と高度な技術を武器に、安価で高性能な「オリジナル商品」までも作りだせるようになりました。

今回の会場となった華強北は街全体が電子部品の倉庫のような場所で、パソコンや携帯電話などのハードウェアに使われる部品は全て手に入ります。つまり、「今までにない新しい携帯電話を作りたい」と思い立ったら部品をかき集めて試作品をすぐに組み立てることができる環境が整っています。

華強北に行けば、ハードウェアの試作品を作る部品が全て手に入るので、ハードウェアのスタートアップたちはこぞって深圳に集まるようになります。同時にそこには「アイディア」も集まるようになります。


華強北 賽格広場

そして、そのアイディアを世に送り出すサポートをするインキュベーターやシリコンバレーのアクセラレーターまでもが深圳に進出し、一気に「お金」も集まるようになりました。

アイディアがあれば深圳に行き、部品を集め、試作品を作る。それをアクセラレーターが評価し投資をし、そして、世に商品を送り出す。このようなハードウェア・スタートアップのエコシステムが深圳にできあがったのです。

アイディア1つで深圳に行けば何かができるという「深圳ドリーム」を胸に若者が集まり、平均年齢33歳という若さと活気に溢れ、そして、歴史にしばられた北京や上海とはまったく異なる新しい都市で、「若さ」と「エコシステム」が融合し、テンセント、 Huawei、BYD、DJI、Makeblockなどの企業や、革新的な技術、 イノベーションが生まれ出すと、ついに深圳が「イノベーションの都」と呼ばれるまでに至りました。


SegMakerの3Dプリンター

このようなイノベーションの嵐が吹き荒れる深圳に住む子供達が何も体験せずに過ごしているのはあまりにも大きなチャンスロスであり、逆にこの機会に子供達が1つでも多くの体験をすることができたのであれば、 子供達一人一人の成長という枠を越えて、将来の日本を支える貴重な人材を育てる機会になるのではないかと思っています。

そこで、今回は中国経済、深圳を研究されている伊藤先生の力をお借りし、まずは親御さん方から深圳の現状をご理解いただき、今後の教育に生かしていっていただきたいと思い、このイベントを企画しました。


SegMakerの展示品

今回のセミナーにご参加いただいた方々とは、「今、深圳に住んでいることに非常に大きな価値がある」ということを共有できたと思います。北京でも上海でも東京でもニューヨークでも、そしてシリコンバレーでも世界中のどこでもなく、そして、5年前や5年後でもなく2017年、2018年の深圳にいることに意味があります。

経済が低迷しどこか暗い雰囲気に覆われた日本ではなく、「若さ、生活の楽しみ、働く楽しみ、希望、夢、イノベーション」など明るい雰囲気に覆われた深圳で育った子供達は、普通の日本人が持ち得ないポジディブでクリエイティブな人格形成に大きな影響をもたらすと思います。

しかし、これは子供達が勝手に感じ取るのではなく、我々大人たちが深圳を正しく理解し、子供達に教育として与えていくべきことです。

深圳には日本人が楽しめるような観光地はほとんどありません。その代わりに、MakerFaire Shenzhenような学びの場はそこら中にあります。

イノベーション都市深圳に住む私たちは、ここにある教育資源を最大限に活用して深圳でしかできない教育を追求していけたらと思います。


NHKスペシャル「シリーズ人体〜神秘の巨大ネットワーク〜」


テレビのススメです。NHKスペシャル「シリーズ人体〜神秘の巨大ネットワーク〜」

10月から3月まで毎月1回ずつ、「人体」にまつわる、最新情報を最新の技術を使った映像で知ることができる番組が放送開始されました。

人体は大脳をはじめとする中枢神経のみで判断し、指令を出しているのではなく、各臓器が放出する物質が血液中を通じて移動し、その物質を使って直接会話をしていることなど、驚くべき内容と映像が満載です。

これは、必見です!毎月欠かさず見ましょう!

9月30日(土)後9:00 プロローグ
10月1日(日)後9:00 「“腎臓”が寿命を決める」
11月5日(日)後9:00 「“脂肪と筋肉”の会話がメタボを治す」
12月3日(日)後9:00 「発見!“骨”が若さを呼び覚ます」

<2018年>
1月7日(日)後9:15 「アレルギーの鍵は“腸”にあり」
2月4日(日)後9:00 「徹底解剖!ひらめく“脳”の秘密」
3月18日(日)後9:00 「生命誕生・あなたを生んだミクロの会話」
3月25日(日)後9:00 「人体は謎に満ちている」


わかば深セン教室 STEM教育の実践。

 わかば深セン教室で実践しているSTEM教育につながる取り組みについてご紹介します。

水中シャボン玉の実験 STEM教育(Science & Mathematics)


シャボン液の実験。小さな科学者たち。

 わかば深セン教室の「パスカルアカデミー」というコースでは、数理能力、言語能力を磨き、そして科学実験を通じて「観察する」「思考する」トレーニングを実践しています。
 今日は、シャボン液を使った実験が題材です。
 シャボン液をストローをスポイト代わりにして、吸い込み、それをゆっくりシャボン液の中に落とすと、液体の中にシャボン玉(?)ができます。なぜ、シャボン液の中にシャボン玉(?)ができるのか?このクラスでは、その場ですぐにこの現象に関する解説を行いません。
 まず何が起こってるのかを何度も何度も試して観察します。そして、何かに気付いたら、その場でどんどん発言してもらいます。


シャボン液の中にシャボン玉?

 通常は、この実験を行った後、生徒たちは解答を得ずに授業は終了します。そして、宿題は、その実験で起こっている現象について考えたり、調べたり、家で自分で実験してみたりすることになります。それを翌週の授業でそれぞれの意見を発表し、再現実験を行ってから、みんなで1つのレポートにまとめます。


色をつけて実験すると気づくことがあるかも!?

 この実験では、シャボン液の濃度が鍵を握っています。学習する学年にもよりますが、ここで割合、濃度の計算が必要になってきます。多くの子供達が嫌いな濃度の計算ですが、この実験を成功させるには、避けては通れません。しかし、子供達は成功させたい実験があるので、普段は嫌いな計算でも必要であれば厭わないものです。
 日本の理科の学習の場合、現象面か、算術面にフォーカスされることが多いかと思いますが、STEM教育の真髄は、ここでしっかり必要な計算を組み込んであげることにあります。自分で問題に気づき、問題を解決するためのツールとしてMathematicsを活用します。小さいうちからこのような経験をしていれば、「算数なんて何の役に立つの?」という疑問は消えてなくなるかもしれません。

mbotでスクラッチを体験。STEM教育(Science & Technology)


Makeblock社のmbot。

 スペシャル授業であった今日、このクラスで初めてプログラム言語の「スクラッチ」に挑戦してみました。スクラッチで動かすのは、Makeblock社が開発したSTEM教育用ロボットのmbotです。Makeblock社は、わかば深セン教室のある深セン市で生まれた企業で、国内外から注目もどんどん高まっている企業です。
 私たちの教室はそんな面白い企業のすぐ近くにあるわけですから、地の利を生かさない手はありません。
 今日は、初めてということで、チュートリアルを使いながら、mbotの持つ機能と、スクラッチの基本形を学びました。そして、基本形を学んだ後はお楽しみの自由時間です。子供達の本当の学びはここから始まるといえます。mbotの持つライントーレス機能を利用するために、黒色のビニールテープを使ってコースを作ります。


何が原因でロボットが走ることができないのかを自然と考える。

 この時、子供たちが発見したのは、コースの曲がりが急すぎるとmbotが対応できずにコースアウトしてしまうことです。今日初めて触った子供がこれに対応するプログラムを書き換えることはできませんが、コースを形を変形させながらロボットがうまくコースを走りまわれるように工夫しはじめます。
 ロボットを使った教育の最大の強みは、あたかも遊んでいるように見えて、実際は子供たちが自主的に問題を発見し、それを解決するために工夫しはじめる点にあります。STEM教育では、Science、Technology、Engineering、Mathematicsの各分野を単純に伸ばすのではなく、その根底にある「自ら問題を発見する」「問題を解決するために思考する」ことを重要視しています。子供達が楽しいと思えれば、子供達は勝手に学びはじめます。
 パスカルアカデミーでは、スクラッチだけではなく、今度はビスケットにも挑戦してみたいと思います。お楽しみに!