香港学習塾 epis Education Centre

わかば深圳教室 教室長ブログ

教室長末木千尋

2011年12月に香港へ赴任。旧九龍教室、わかば深圳教室とで合計6年間勤務をし、2017年から再び深圳へ。きめ細やかなサポートには定評があり、時間が経つのも忘れついつい話し込んでしまうことも。本気で立ち向かう生徒の守護神として頼れるアネゴ的存在であるスエキチ先生は、衣食住どれをとっても刺激の絶えないここ深圳での生活がお気に入り。暑さには弱いが辛さには強い。好物は山椒のたっぷり入った激辛料理全般だとか。

わかば深セン教室 STEM教育の実践。

 わかば深セン教室で実践しているSTEM教育につながる取り組みについてご紹介します。

水中シャボン玉の実験 STEM教育(Science & Mathematics)


シャボン液の実験。小さな科学者たち。

 わかば深セン教室の「パスカルアカデミー」というコースでは、数理能力、言語能力を磨き、そして科学実験を通じて「観察する」「思考する」トレーニングを実践しています。
 今日は、シャボン液を使った実験が題材です。
 シャボン液をストローをスポイト代わりにして、吸い込み、それをゆっくりシャボン液の中に落とすと、液体の中にシャボン玉(?)ができます。なぜ、シャボン液の中にシャボン玉(?)ができるのか?このクラスでは、その場ですぐにこの現象に関する解説を行いません。
 まず何が起こってるのかを何度も何度も試して観察します。そして、何かに気付いたら、その場でどんどん発言してもらいます。


シャボン液の中にシャボン玉?

 通常は、この実験を行った後、生徒たちは解答を得ずに授業は終了します。そして、宿題は、その実験で起こっている現象について考えたり、調べたり、家で自分で実験してみたりすることになります。それを翌週の授業でそれぞれの意見を発表し、再現実験を行ってから、みんなで1つのレポートにまとめます。


色をつけて実験すると気づくことがあるかも!?

 この実験では、シャボン液の濃度が鍵を握っています。学習する学年にもよりますが、ここで割合、濃度の計算が必要になってきます。多くの子供達が嫌いな濃度の計算ですが、この実験を成功させるには、避けては通れません。しかし、子供達は成功させたい実験があるので、普段は嫌いな計算でも必要であれば厭わないものです。
 日本の理科の学習の場合、現象面か、算術面にフォーカスされることが多いかと思いますが、STEM教育の真髄は、ここでしっかり必要な計算を組み込んであげることにあります。自分で問題に気づき、問題を解決するためのツールとしてMathematicsを活用します。小さいうちからこのような経験をしていれば、「算数なんて何の役に立つの?」という疑問は消えてなくなるかもしれません。

mbotでスクラッチを体験。STEM教育(Science & Technology)


Makeblock社のmbot。

 スペシャル授業であった今日、このクラスで初めてプログラム言語の「スクラッチ」に挑戦してみました。スクラッチで動かすのは、Makeblock社が開発したSTEM教育用ロボットのmbotです。Makeblock社は、わかば深セン教室のある深セン市で生まれた企業で、国内外から注目もどんどん高まっている企業です。
 私たちの教室はそんな面白い企業のすぐ近くにあるわけですから、地の利を生かさない手はありません。
 今日は、初めてということで、チュートリアルを使いながら、mbotの持つ機能と、スクラッチの基本形を学びました。そして、基本形を学んだ後はお楽しみの自由時間です。子供達の本当の学びはここから始まるといえます。mbotの持つライントーレス機能を利用するために、黒色のビニールテープを使ってコースを作ります。


何が原因でロボットが走ることができないのかを自然と考える。

 この時、子供たちが発見したのは、コースの曲がりが急すぎるとmbotが対応できずにコースアウトしてしまうことです。今日初めて触った子供がこれに対応するプログラムを書き換えることはできませんが、コースを形を変形させながらロボットがうまくコースを走りまわれるように工夫しはじめます。
 ロボットを使った教育の最大の強みは、あたかも遊んでいるように見えて、実際は子供たちが自主的に問題を発見し、それを解決するために工夫しはじめる点にあります。STEM教育では、Science、Technology、Engineering、Mathematicsの各分野を単純に伸ばすのではなく、その根底にある「自ら問題を発見する」「問題を解決するために思考する」ことを重要視しています。子供達が楽しいと思えれば、子供達は勝手に学びはじめます。
 パスカルアカデミーでは、スクラッチだけではなく、今度はビスケットにも挑戦してみたいと思います。お楽しみに!


深センのSTEM教育の現状(PBLの実践)

Shenzhen American International School

先日、深センにいながらもアメリカの最新のSTEM教育の現場を見る事ができるということで、深セン市南山区にあるSAIS(Shenzhen American International School)を訪問させていただきました。

 同校では、問題解決学習(PBL:Project Based Learnig)を学校全体で採用しています。PBLでは、日本の教育の中心である、先生が生徒に対して「教える(teaching)」教育ではなく、生徒が自ら「学ぶ(learn)」姿勢を最重要課題としています。

 見学した5年生の時間割は、Humanities、Math/Science、Chinese、Art/Maker/PEの4教科に大別され、生徒たちはこの時間の中で自分の興味を持ったことから自分のProjectを決定します。また、どの教科も常に横断的な学習を行っており、Humanitiesで気づいた統計的な問題があれば、それをMath/Scienceの授業に持ち込んで、問題解決をしています。ここには「算数・数学が一体何の役に立つの?」という日本ではよく聞かれる質問も愚問という他ありません。

 ある生徒はHumanitiesの時間で歴史上の人物に興味を持ったので、 自分のアイディアを生かしてUnityを使ってゲームを作ったとのこと。つまりUnityを教え込んだ後に、何を作るかを考えるのではなく、何かゲームを作りたいと思った生徒にUnityを与えるというシステムです。


校内のMaker Space

 3年生のクラスでは、ダンボールで椅子を作るプロジェクトを進行中でした。一見すると粗末なダンボールで作られた椅子が制作途中なのですが、ここで重要なのは、まず生徒に作らせてみること。作った椅子に座ってみるとすぐ潰れてしまったり、背もたれが折れてしまったりしたときに、どうすれば耐久性が高められるのかを考えます。このときも先生が指示をするのではなく、あくまでも生徒から自発的かつ具体的な質問があったときに、先生が初めて動きだします。それも、解答を与えるのではなく、生徒が能動的に解決できるようなヒントを与えます。

 物を作ることが目的なのではなく、物を作る過程で問題点を自ら発見し、それをいかに解決していくかを重要視しているということです。

 私自身、中学生の時に、木材を使って折りたたみのできる椅子を作ったことがあります。設計図通りに木材を切って組み立てるということでした。ダンボールの椅子と木材で作った椅子を比べたら、完全に木材の椅子の完成度が高いわけですが、その制作過程で得られた問題解決能力向上の機会は、やはりPBL方式に軍配があがると思われます。


 SAISには「Maker」の授業が、日本の学校には「技術家庭」の授業があり、物を作ってみるという点では全く同じであるのに、その底流に流れる思想と目的が全くことなるため、教育の成果が大きく異なってきています。

 日本でも「STEM教育」「プログラム教育」という言葉盛んに聞かれるようになってきました。どちらの教育もすぐに初めたらいいのですが、そこで注意しなければならないのは、いずれの教育にも根底には「自ら問題を発見する」「自ら考え問題を解決したいというモチベーション」が必要だということで、それら無しにはこの教育を初める価値が激減してしまうということです。

 これは、STEM、プログラムに限ったことではなく、現状の学習教科である、国語、数学、英語などの学習においても、いかに生徒たちのモチベーションを高められるかが教育上の最も大きな課題だと言えます。STEM、プログラム教育の導入をきっかけに、日本の教育のあり方を見直す機会になればと思います。