わかば深圳教室 教室長ブログ

教室長飯尾真之

エピス開校間もない2003年3月に香港へ赴任。その後、九龍教室、メルボルン教室、蘇州教室と渡り歩き、現在わかば深セン教室在籍。さまざまなバックグラウンドをもつ海外在住生徒を導いた経験から、その子その子に応じた適格な学習指導をすることに定評があります。神奈川県出身ですが、どういうわけか小4からウン10年、筋金入りのカープファン。20年近く辛酸を舐めてきましたが、ここ数年、応援が報われる機会が増えてきています。

セミナー開催のご報告「イノベーション都市としての深圳」

SegMakerでのセミナーの様子

10月26日(木)深圳市福田区華強北にあるメイカースペース・コワーギンクスペースのSegMakerにて「イノベーション都市としての深圳」というテーマで東京大学の伊藤亜星先生にご講演いただきました。

今回、伊藤先生には、このセミナーを「お父さん、お母さん」向けに開催していただきました。それは、深圳に住む多くの日本人が深圳に住んでいるにもかかわらず、目の前で何が起こっているのかを理解することができていないことに、私自身が非常に強く危機感を抱いていたからです。


華強北の電気街

今深圳は激動の時代を迎えています。かつて「コピー商品のメッカ」という惨めな呼称を持っていた深圳ですが、今や、「ハードウェアのシリコンバレー」「イノベーションの都」と天地が一変するようにその評価が激変しています。

深圳の技術者たちは、コピー商品を安く大量に生産し続ける過程で、完璧なコピー商品、さらには本物よりも高機能な商品まで作り出せるようになりました。技術者たちは、安価な労働力と高度な技術を武器に、安価で高性能な「オリジナル商品」までも作りだせるようになりました。

今回の会場となった華強北は街全体が電子部品の倉庫のような場所で、パソコンや携帯電話などのハードウェアに使われる部品は全て手に入ります。つまり、「今までにない新しい携帯電話を作りたい」と思い立ったら部品をかき集めて試作品をすぐに組み立てることができる環境が整っています。

華強北に行けば、ハードウェアの試作品を作る部品が全て手に入るので、ハードウェアのスタートアップたちはこぞって深圳に集まるようになります。同時にそこには「アイディア」も集まるようになります。


華強北 賽格広場

そして、そのアイディアを世に送り出すサポートをするインキュベーターやシリコンバレーのアクセラレーターまでもが深圳に進出し、一気に「お金」も集まるようになりました。

アイディアがあれば深圳に行き、部品を集め、試作品を作る。それをアクセラレーターが評価し投資をし、そして、世に商品を送り出す。このようなハードウェア・スタートアップのエコシステムが深圳にできあがったのです。

アイディア1つで深圳に行けば何かができるという「深圳ドリーム」を胸に若者が集まり、平均年齢33歳という若さと活気に溢れ、そして、歴史にしばられた北京や上海とはまったく異なる新しい都市で、「若さ」と「エコシステム」が融合し、テンセント、 Huawei、BYD、DJI、Makeblockなどの企業や、革新的な技術、 イノベーションが生まれ出すと、ついに深圳が「イノベーションの都」と呼ばれるまでに至りました。


SegMakerの3Dプリンター

このようなイノベーションの嵐が吹き荒れる深圳に住む子供達が何も体験せずに過ごしているのはあまりにも大きなチャンスロスであり、逆にこの機会に子供達が1つでも多くの体験をすることができたのであれば、 子供達一人一人の成長という枠を越えて、将来の日本を支える貴重な人材を育てる機会になるのではないかと思っています。

そこで、今回は中国経済、深圳を研究されている伊藤先生の力をお借りし、まずは親御さん方から深圳の現状をご理解いただき、今後の教育に生かしていっていただきたいと思い、このイベントを企画しました。


SegMakerの展示品

今回のセミナーにご参加いただいた方々とは、「今、深圳に住んでいることに非常に大きな価値がある」ということを共有できたと思います。北京でも上海でも東京でもニューヨークでも、そしてシリコンバレーでも世界中のどこでもなく、そして、5年前や5年後でもなく2017年、2018年の深圳にいることに意味があります。

経済が低迷しどこか暗い雰囲気に覆われた日本ではなく、「若さ、生活の楽しみ、働く楽しみ、希望、夢、イノベーション」など明るい雰囲気に覆われた深圳で育った子供達は、普通の日本人が持ち得ないポジディブでクリエイティブな人格形成に大きな影響をもたらすと思います。

しかし、これは子供達が勝手に感じ取るのではなく、我々大人たちが深圳を正しく理解し、子供達に教育として与えていくべきことです。

深圳には日本人が楽しめるような観光地はほとんどありません。その代わりに、MakerFaire Shenzhenような学びの場はそこら中にあります。

イノベーション都市深圳に住む私たちは、ここにある教育資源を最大限に活用して深圳でしかできない教育を追求していけたらと思います。


わかば深セン教室 STEM教育の実践。

 わかば深セン教室で実践しているSTEM教育につながる取り組みについてご紹介します。

水中シャボン玉の実験 STEM教育(Science & Mathematics)


シャボン液の実験。小さな科学者たち。

 わかば深セン教室の「パスカルアカデミー」というコースでは、数理能力、言語能力を磨き、そして科学実験を通じて「観察する」「思考する」トレーニングを実践しています。
 今日は、シャボン液を使った実験が題材です。
 シャボン液をストローをスポイト代わりにして、吸い込み、それをゆっくりシャボン液の中に落とすと、液体の中にシャボン玉(?)ができます。なぜ、シャボン液の中にシャボン玉(?)ができるのか?このクラスでは、その場ですぐにこの現象に関する解説を行いません。
 まず何が起こってるのかを何度も何度も試して観察します。そして、何かに気付いたら、その場でどんどん発言してもらいます。


シャボン液の中にシャボン玉?

 通常は、この実験を行った後、生徒たちは解答を得ずに授業は終了します。そして、宿題は、その実験で起こっている現象について考えたり、調べたり、家で自分で実験してみたりすることになります。それを翌週の授業でそれぞれの意見を発表し、再現実験を行ってから、みんなで1つのレポートにまとめます。


色をつけて実験すると気づくことがあるかも!?

 この実験では、シャボン液の濃度が鍵を握っています。学習する学年にもよりますが、ここで割合、濃度の計算が必要になってきます。多くの子供達が嫌いな濃度の計算ですが、この実験を成功させるには、避けては通れません。しかし、子供達は成功させたい実験があるので、普段は嫌いな計算でも必要であれば厭わないものです。
 日本の理科の学習の場合、現象面か、算術面にフォーカスされることが多いかと思いますが、STEM教育の真髄は、ここでしっかり必要な計算を組み込んであげることにあります。自分で問題に気づき、問題を解決するためのツールとしてMathematicsを活用します。小さいうちからこのような経験をしていれば、「算数なんて何の役に立つの?」という疑問は消えてなくなるかもしれません。

mbotでスクラッチを体験。STEM教育(Science & Technology)


Makeblock社のmbot。

 スペシャル授業であった今日、このクラスで初めてプログラム言語の「スクラッチ」に挑戦してみました。スクラッチで動かすのは、Makeblock社が開発したSTEM教育用ロボットのmbotです。Makeblock社は、わかば深セン教室のある深セン市で生まれた企業で、国内外から注目もどんどん高まっている企業です。
 私たちの教室はそんな面白い企業のすぐ近くにあるわけですから、地の利を生かさない手はありません。
 今日は、初めてということで、チュートリアルを使いながら、mbotの持つ機能と、スクラッチの基本形を学びました。そして、基本形を学んだ後はお楽しみの自由時間です。子供達の本当の学びはここから始まるといえます。mbotの持つライントーレス機能を利用するために、黒色のビニールテープを使ってコースを作ります。


何が原因でロボットが走ることができないのかを自然と考える。

 この時、子供たちが発見したのは、コースの曲がりが急すぎるとmbotが対応できずにコースアウトしてしまうことです。今日初めて触った子供がこれに対応するプログラムを書き換えることはできませんが、コースを形を変形させながらロボットがうまくコースを走りまわれるように工夫しはじめます。
 ロボットを使った教育の最大の強みは、あたかも遊んでいるように見えて、実際は子供たちが自主的に問題を発見し、それを解決するために工夫しはじめる点にあります。STEM教育では、Science、Technology、Engineering、Mathematicsの各分野を単純に伸ばすのではなく、その根底にある「自ら問題を発見する」「問題を解決するために思考する」ことを重要視しています。子供達が楽しいと思えれば、子供達は勝手に学びはじめます。
 パスカルアカデミーでは、スクラッチだけではなく、今度はビスケットにも挑戦してみたいと思います。お楽しみに!


深センのSTEM教育の現状(PBLの実践)

Shenzhen American International School

先日、深センにいながらもアメリカの最新のSTEM教育の現場を見る事ができるということで、深セン市南山区にあるSAIS(Shenzhen American International School)を訪問させていただきました。

 同校では、問題解決学習(PBL:Project Based Learnig)を学校全体で採用しています。PBLでは、日本の教育の中心である、先生が生徒に対して「教える(teaching)」教育ではなく、生徒が自ら「学ぶ(learn)」姿勢を最重要課題としています。

 見学した5年生の時間割は、Humanities、Math/Science、Chinese、Art/Maker/PEの4教科に大別され、生徒たちはこの時間の中で自分の興味を持ったことから自分のProjectを決定します。また、どの教科も常に横断的な学習を行っており、Humanitiesで気づいた統計的な問題があれば、それをMath/Scienceの授業に持ち込んで、問題解決をしています。ここには「算数・数学が一体何の役に立つの?」という日本ではよく聞かれる質問も愚問という他ありません。

 ある生徒はHumanitiesの時間で歴史上の人物に興味を持ったので、 自分のアイディアを生かしてUnityを使ってゲームを作ったとのこと。つまりUnityを教え込んだ後に、何を作るかを考えるのではなく、何かゲームを作りたいと思った生徒にUnityを与えるというシステムです。


校内のMaker Space

 3年生のクラスでは、ダンボールで椅子を作るプロジェクトを進行中でした。一見すると粗末なダンボールで作られた椅子が制作途中なのですが、ここで重要なのは、まず生徒に作らせてみること。作った椅子に座ってみるとすぐ潰れてしまったり、背もたれが折れてしまったりしたときに、どうすれば耐久性が高められるのかを考えます。このときも先生が指示をするのではなく、あくまでも生徒から自発的かつ具体的な質問があったときに、先生が初めて動きだします。それも、解答を与えるのではなく、生徒が能動的に解決できるようなヒントを与えます。

 物を作ることが目的なのではなく、物を作る過程で問題点を自ら発見し、それをいかに解決していくかを重要視しているということです。

 私自身、中学生の時に、木材を使って折りたたみのできる椅子を作ったことがあります。設計図通りに木材を切って組み立てるということでした。ダンボールの椅子と木材で作った椅子を比べたら、完全に木材の椅子の完成度が高いわけですが、その制作過程で得られた問題解決能力向上の機会は、やはりPBL方式に軍配があがると思われます。


 SAISには「Maker」の授業が、日本の学校には「技術家庭」の授業があり、物を作ってみるという点では全く同じであるのに、その底流に流れる思想と目的が全くことなるため、教育の成果が大きく異なってきています。

 日本でも「STEM教育」「プログラム教育」という言葉盛んに聞かれるようになってきました。どちらの教育もすぐに初めたらいいのですが、そこで注意しなければならないのは、いずれの教育にも根底には「自ら問題を発見する」「自ら考え問題を解決したいというモチベーション」が必要だということで、それら無しにはこの教育を初める価値が激減してしまうということです。

 これは、STEM、プログラムに限ったことではなく、現状の学習教科である、国語、数学、英語などの学習においても、いかに生徒たちのモチベーションを高められるかが教育上の最も大きな課題だと言えます。STEM、プログラム教育の導入をきっかけに、日本の教育のあり方を見直す機会になればと思います。


シェアサイクルブームは中国に何をもたらすのか

駐輪スペースに停められたシェアサイクル

シェアサイクルが中国で猛烈な勢いで普及しています。最近ではその勢いが日本にまで届き北海道でもモバイクが導入されたようです。
そして、その普及が加速するなか、同時に駐輪のマナーについて言及されることが増えてきています。日本のマスコミからすれば、「中国人はマナーが悪く好き勝手に乗り捨てるから最低!」という中国批判の記事を書く格好のネタになるでしょうし、情報を受け取る日本人からすれば、「やっぱり中国人はダメだね」と言ってちょっとした安堵かんを得られるのでしょう。
しかし、よくよくこの社会現象を見ているとシェアサイクルの普及は、実は中国人のマナー意識を高めたと言えます。一旦は無政府状態で誰もが好き勝手に乗り捨てていましたが、今では、「マンション内には乗り入れない」「決められた場所に停める」というような意識が育ってきています。
日本ではルールを決めて、決めたルールはみんなで守るというスタンスだと思いますが、中国ではルールを先に決めるのではなく、始めてみたことに問題が起こったら修正していくスタンスで、失敗することや改善点が浮上することが前提で、始めから完璧なものを作り出すのではありません。
中国に暮らす日本人にとってみれば、そのような学びの機会が生活の中にも含まれています。今中国で暮らす子供たちがグローバルな視点で物事を捉えていくという意味でも、子供のうちから中国のやり方を肌で知ることができるのは、貴重な経験だと言えます。
そのためにも、私たち大人が自分たちの住む社会を理解し、「日本と違うものはダメ」ということではなく、「なぜダメなのか」「本当にダメなのか」を学びなおす機会としていかなければならないと思います。


誕生日おめでとう


深圳市は1979年8月26日に、深圳経済特区に指定されました。昨日がその8月26日でしたので、ちょうど37周年の日にあたります。
経済特区に指定されただけではなく、深圳市が誕生したのも同じ年の1979年の3月ということで、深圳市にはたった37年の歴史しかありません。それまでは宝安県という小さな県でした。県というのは、日本では「県」の方が「市」よりも広い地域を管轄するのに対して、中国では「市」の方が、「県」よりも広い地域を管轄しています。
深圳は1979年3月に宝安県から深圳市に格上げされ、さらに同年8月に経済特区にしてされたその直後から、香港に隣接する中国の都市として急速な発展を遂げました。
深圳は日本での知名度が非常に低いかと思いますが、中国国内はもちろん、世界の経済界が注目する都市であることは間違いないと思います。
私は、せめて深圳に住む日本の子供たちには、自分たちの住む深圳を少しでも多く知った上で、帰国してほしいと思っています。それは、深圳には爆発的な経済成長を推進するパワーと、夢と希望を持った若者が集まる情熱があるので、そこで育った日本人にも深圳で育ったからこそ、パワーと情熱のみなぎる人物に育ってほしい思うのです。
そんな深圳市がどんなところなのか、深圳のニュースサイトに深圳市を空撮した動画がアップロードされましたので、ぜひご覧になってみてください。こちらで見れます。→深圳新聞網
いつの日か深圳育ちの日本人の活躍がニュースで報道されるなんて日が来ることを楽しみにしています。


深圳のランドマークの地王大廈も新しい京基100の隣では小さく見える。